永井吐無展鑑賞後記                  2021・9・9

9月4日(土)~11日(土)迄、東京都国立市の国立駅南口前、岳画廊に於いて開催された、永井先生の個展にお伺いしました。日本の寺社仏閣80選(ペン画)と富士山(油彩)、”静謐なる世界をご高覧頂き度く”とあり、9日当日は奉納舞が披露されますとありました。先生のペン画は何度も拝見していますが、これぞ神業かと何時も感動してしまいます。私も画家としての顔を持っているので先生の技術レベルの高さが理解できますので、何時も舌を巻く次第です。永年連れ添われた奥様もそのことに話が及ぶと信じられないぐらいの正確、精緻と言われます。

その上に、先生の絵は技術的なレベルの高さに相俟ってその精神性の高さに何時も感動をしてしまいます。

今回のペン画も富士の絵も先生の大きな意図は海外の同胞、その2世3世に日本文化、日本の精神性の高さを見てもらいたい事にあります。

残念ながら、我が国は病んでいます。古来から受け継がれてきた日本人の文化、美意識、美学は細々とした存在になりつつあり、ドライで無味乾燥な成果、効率、人でなしの奇抜、果ては恐怖表現法が跋扈する時代になりました。

今や”お天道様が見ているよ”と子供達に教え諭す大人は過去の存在です!

先生は齢70歳後半、残りの人生を、かって良き時代の日本を知ってもらいたいと遠く海外に暮らす元日本人の心に灯をともしたい一心に駆られての個展でした。一つ残念なことは、奉納舞を見る事なしにお暇ました事です。四国、栗林公園で撮られたビデオで拝見した舞の幽玄で神秘の世界は素晴らしいものでした。コロナ禍で、先生の企画は今頓挫しています。残念でなりません!                                                                                    森  務