第53回創展を振り返って

第53回創展を振り返って             2019・10・15

令和元年秋、9月27日から10月5日迄、東京都美術館に於いて恒例の創展が作家108名、133点の出品作品と共に開催されました。実質9日間の来場者は3500人をはるかに超え、会場はいつも賑やかな談笑に包まれていました。然し、和やかな内にも作家間或いは評論家、創展フアンの美術愛好家の間には厳しくも暖かい寸評が行き交い、流石に芸術作品の発表の場だなと感じています。唯一つ残念なことは、今回、会員の高齢化による出品辞退者が10数名に上った事です。創展も53年の歴史と共に創立会員を含め多くのご活躍された作家がご逝去されています。ここ創展でも時代の潮流、時間の経過をひしひしと感じています。

第53回創展の審査については、お二方の美術評論家(佃・勅使河原先生)と10名の理事・選考委員による厳正公平な審査、賞決定が、10月12日、13日、14日の3日間で行われました。今年の最高賞である文部科学大臣賞は準会員の大久保青比さんの”Mrand Mr,が激論の末、審査員総員賛成で選ばれました。作品はキャンバスにごくありふれた男と女の姿が描かれていますが、頭と顔は何とも不可思議な図案化された曲線で描かれ洋服も本当の布地を丁寧に縫い合わせ、背景の花もトンボもし刺繍で表現されています、評論家の弁ですが、誠にミステリアスな作品であります。作者は東京芸大デザイン科を卒業後、し刺繍に携わるクラフト工房に所属し、同時に画家として研鑽され、現在に至っています。                     

創展賞は会員の津島兼昌氏の”クレイダーマン”、会員努力賞は会員の横溝靖靖子さんの”陰翳”、課題優秀賞は会員の座本並生絢氏の”夢の途中・楽園の夜明け”、クリテイック賞(評論家賞)は会員の砂田恭子さんの”Heart Station`19”、アートギャラリー月桂樹賞は準会員の町田政江さんの”新緑水音”と一般出品者の開高悦子さんの”花蓮に魅せられて”、日月賞は会員の川口武男氏の”静寂”、ホルベイン賞は会員の赤川司氏の”和の礎”協会賞は会員の原田耿太郎氏の”森の家族”新人賞は一般出品者の貞嶋生子さんの”いにしえのみち”奨励賞は会員の成田亮氏の”創造の刻”、準会員の高久省三氏の”ふあッ ふわッ”会友の久保光子さんの”闘魂”、会友の吉田迪子さんの”気高く”一般出品者の上杉正志氏の”情景”一般出品者の太西千明さんの”宴”、一般出品者の谷口眞理子さんの”ギャラリーステップ”、一般出品者の塚原ちさとさんの”ここなら見つからない”と何れも心を打つ秀作揃いです。

第53回展の課題は「家族」でした。課題、自由課題の選択は自由であり、作家が、何物にも、既成の権威にとらわれず自由闊達に己の芸術活動に邁進する事が創展の理念であり、同時に多様性の存在を寛容に受け入れ、作家が作品の発表を機に、互いに切磋琢磨して芸術活動を推し進める姿こそが創展の発展の原動力と確信して居ります。これから、創展も日本画、洋画、版画、ミクストメデイア、工芸プラスアルファーと幅広い造形の世界に目を向け、芸術を志す多くのお仲間の集う場所にしたいと思います。50回記念展から紙絵のお仲間が参加され、52回展からはシャドーボックスのお仲間が参加されています。

紙絵、シャドーボックス共に作家の芸術作品制作への崇高な意志、たゆまざる研鑽を垣間見るたびに、創展の一員として将来大きく飛躍される事を期待しています。会期を終わり、有り難く感じたことは多くのご来場者が楽しんで創展を鑑賞して頂いたことです!昨今、公募展の運営が厳しい傾向にありますが、我々作家の芸術活動を一番身近に応援して下さる多数の美術愛好家・鑑賞者の皆様あっての創展であります。さて、もう54回展へのラッパは吹かれました!来年も創展に集うメンバーの生き生きとした作品をご期待ください!

                                  創展会長 森  務

 

 

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